豊岡市でもジワジワと増えているアライグマ。今回は市街地から里山まで、どこでも暮らせる厄介者のアライグマを紹介します。

▶かわいい顔した侵略者 ― アライグマの正体 ―
アライグマはネコよりもイヌに近い、北米原産の哺乳類です。キンカジューやハナグマなど、アメリカ大陸で多様に進化した「見た目のかわいい珍獣」の仲間です。そのかわいい見た目も相まって、1970年代にアニメの主人公として日本で人気が爆発し、ペットとして輸入されました。個体によっては気性が荒いこともあり、多くのアライグマが野外に遺棄されました。現在は沖縄県を除く北海道・本州・四国・九州に分布し、各地で分布を拡大しています。分布が拡大した地域では、トウモロコシやブドウなどの農作物を食害する農業被害、神社や空き家などの家屋をねぐらや繁殖地にしてしまう家屋侵入被害、人やペットにも感染する病気の媒介、サンショウウオなど絶滅危惧種の捕食といった、様々な問題を引き起こします。
▶分布45%、豊岡市はいま「瀬戸際」
豊岡市での現状はどうでしょうか。兵庫県森林動物研究センターが、県内約4千の集落を対象に実施しているアンケート調査の結果によると、豊岡市では2008年に16%の集落で分布が確認されていたのに対し、2024年には45%と、半数に迫る勢いで上昇を続けています。ただし捕獲数は分布の上昇ほど増加しておらず、年20~50頭ほどで推移しています。実はここが難しいところで、ある程度数が増えて被害が深刻にならないと捕獲圧がかかりにくいのが実情です。気が付いた時にはお手上げ、ということになりかねません。豊岡市はまさにその瀬戸際にあるといえるでしょう。これを防ぐためにも、目撃情報の集約や市民参加型の捕獲が重要になります。今からでも遅くはありません。

▶DNAでわかった「何でも食べる」実態
豊岡市内で捕獲されたアライグマが何を食べているかをDNAで調査したところ、実に多様でした。前回の紹介で取り上げられたアメリカザリガニをはじめ、モクズガニ、サワガニ、ミナミヌマエビ、トノサマガエルなどの水生小動物から、柿などの植物まで、幅広い獲物が確認されています。この詳細は、兵庫ワイルドライフモノグラフで2026年度中に公表する予定です(これまでに公表されている資料は下部のリンクより参照いただけます)。

▶爪痕と足跡で見分けるコツ
アライグマは主に夜に活動するため、あまり人目に付きませんが、痕跡で分布を把握することもできます。神社や木造家屋の柱に出入りする際に爪痕を付けます。ハクビシンも同様の爪痕を残すため区別が難しい場合もありますが、長めの爪痕であればアライグマの可能性が高くなります。神社では、拝殿手前の柱によく爪痕が残ります。足跡はさらに判別しやすい痕跡で、長い指のある、赤ちゃんの手のような跡が残ります。

コウノトリをはじめ生物多様性の重要な地域である豊岡市内で、これ以上アライグマの分布や密度を増やさないためにも、市民の皆さんによる目撃情報の提供や捕獲へのご協力が必要となります。
より詳しくは兵庫県森林動物研究センターHPへ
(写真・文 兵庫県立大学自然・環境科学研究所 栗山 武夫)