ラムサール条約は、正式名称を「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」と言い、国際的に重要な湿地と、そこに生息・生育する動植物を保全し、賢明な利用を進めることを目的とした国際条約です。
コウノトリの生息を支える豊岡の自然環境や自然再生の取組みなどを受け、これからも持続的に湿地を保全するため「円山川下流域・周辺水田」がラムサール条約湿地に登録されました。
その登録は、国際的に重要な湿地と認められた証でもあります。
ラムサール条約における湿地の定義
湿地は、人工か天然かを問わずに、常時あるいは季節的に水をたっぷりと含む土地、あるいは水で覆われる土地のことを指します。
例:河川、遊水池、水田、ため池、水路、ダム湖、干潟、藻場、サンゴ礁など
「円山川下流域・周辺水田」の概要
- 湿地の名称
- 円山川下流域・周辺水田
- 英語名
- Lower Maruyama River and the surrounding rice paddies
- 登録日
- 2012年7月3日(拡張:2018年10月18日)
- 面積
- 1,094 ha
- 湿地のタイプ
- 河川、河口域、水田
- 所在地
- 兵庫県豊岡市
- 座標
- 北緯35度37分、東経134度49分
- 標高
- 0~20m
- 国際登録基準
- 基準② 絶滅のおそれのある種や群集を支えている湿地
基準⑧ 魚類の食物源、産卵場、稚魚の生息場として重要な湿地
- 湿地の特徴
- 河川及び周辺水田、コウノトリ、キタノメダカ等の生息地
- 保護の形態
- 国指定円山川下流域鳥獣保護区円山川下流域特別保護地区、山陰海岸国立公園特別地域、河川区域
エリア図
円山川を中心に、水田や休耕田を活用した人工湿地など、多様な湿地で形成されています。
水辺の生きものを育む豊かな湿地環境は、絶滅危惧種のコウノトリの良好な生息地となっています。
円山川
豊岡市に流れる円山川は、兵庫県朝来市生野町円山(標高640m)を源に発する、一級河川です。大屋川、八木川、稲葉川等の支川を合わせて豊岡盆地を貫流し、豊岡市において出石川、奈佐川等を合わせ日本海に注ぎます
円山川は、10km進んでも1mほどの高低差しかない、非常に緩やかな川です。そのため、汽水域(淡水と海水が混じりあっている状態の水域)は、河口から16 km以上上流にまで広がっています。
河川延長:67.3km
流域面積:1,300㎢
田結(たい)湿地
戸島湿地に営巣していたコウノトリが飛来するようになったのをきっかけに、2008(平成20)年に、休耕田を整備した湿地創出が始まりました。地元NPOの支援や研究者のアドバイスを受けながら、住民による湿地としての管理が始まりました。個々の土地境界にこだわらず、村の共有財産として管理作業を行っています。
豊富な水とシカやイノシシなどによる適度な撹乱が、休耕田を「明るい湿地」として保ち、谷は生きものたちの宝庫になっています。
湿地面積:約12ha
ハチゴロウの戸島(としま)湿地
大陸から訪れた野生コウノトリのハチゴロウ〔2007(平成19)年2月死亡〕が好んで舞い降りた湿田を「ハチゴロウの戸島湿地」として2009(平成21)年4月に整備しました。
楽々浦湾~円山川~日本海と水路でつながる汽水湿地(0.79ha)と農業用水や湧水を引き込んだ淡水湿地(2.5ha)が仕切堤防で区切られており、堤防に設置された起伏ゲートを利用して、たくさんの魚類等が行き来します。
湿地内の人工巣塔では、2008(平成20)年から連続でヒナが誕生し、円山川下流域における生息の拠点として機能しています。
湿地面積:約3.2ha
出石川
出石川は円山川の支流のひとつ。そばには「鶴山」があり、今も昔も、出石川や近くの水田には、コウノトリが餌を求めてやってきます。
河川延長:32.4km
加陽(かや)湿地
円山川と出石川の合流点付近に位置する沖加陽区・下加陽区で、国土交通省が河川区域内に整備した人工湿地です。閉鎖型と開放型の湿地が併設されています。
共生のシンボルともいえる「コウノトリと但馬牛と農家」の写真が撮られた場所でもあり、かつての出石川の周りの湿地のようにさまざまな生き物の生活の場を取り戻すことを目指しています。
2009年(平成21年)着手、2015年(平成27年)概成
湿地面積:約15ha
豊岡市では、ラムサール条約湿地の登録エリア以外でも、さまざまな自然環境保全の取組みが行われています。