現在の取組み

大型で肉食の鳥・コウノトリが野外で生息していくためには、エサとなる生きものにあふれた「豊かな自然」と、コウノトリを人里の暮らしに受け入れる「大らかな文化」の両方が必要です。
豊岡市では、「コウノトリが住める」ではなく、私たちの暮らしのありようを含む「コウノトリも住める」環境を再生し、創造していくことを目指しています。

生息地保全

豊岡市内には、コウノトリの生息地となるような大規模な湿地や農家の協力で設置した水田ビオトープなど、さまざまな湿地があります。コウノトリが舞い降りる生きものいっぱいの湿地を維持するためには、人の手で管理をすることが大切です。

水田ビオトープ

農家に管理委託し、市内各地に休耕田等を利用した水田ビオトープを設置しています。コウノトリの餌場として地域の生物多様性を保全するとともに、子ども達の環境体験学習の場にもなっています。

ビオトープとは
「ビオトープ」とは、ギリシャ語の「bios(生物)」と「topos(場所)」の合成語で、生物が生息している空間のことを意味します。
詳しくは、日本ビオトープ協会ホームページをご覧ください。
ビオトープとは | 日本ビオトープ協会 (biotope.gr.jp)

人材育成

これまでの取組みを未来へつなげていくためには、次世代を担う子ども達を育てていくことが重要です。

ふるさと教育

世界に誇れる「ふるさと豊岡」を、子ども達にしっかり伝えるため、2017(平成29)年、市内すべての公立小中学校で「ふるさと教育」授業が始まりました。

「ジオパーク」「コウノトリ」「産業・文化」をテーマに、小学校3年生から中学校3年生までの7年間、「ふるさと豊岡」の魅力を学びます。

コウノトリ分野では、コウノトリ野生復帰を知ることからはじまり、子ども達はコウノトリも住めるまちづくりのために自分たちができることは何かを考えます。

生きもの調査授業

水田ビオトープや川など地域の自然をフィールドにして、ふるさと教育と連携した生きもの調査を行っています。

コウノトリKIDSクラブ

コウノトリとその生息を支える豊岡の自然について学び、発信できる子どもを育てることを目的に学校や学年を越えた活動団体「コウノトリKIDSクラブ」を運営しています。

対象は豊岡市内の小学校46年生で、2012(平成24)年からは、コウノトリKIDSクラブ経験者の中学生が「KIDSプラス」として加わり、自然に関する知識を身に付けながら、コウノトリ野生復帰を未来に継承していけるキーパーソンの育成を図ります。

出張!「田んぼの学校」

地域の子ども会(育成会)やPTA、農会などが行う自然体験学習を支援するため、NPO法人コウノトリ市民研究所とともに「出張!田んぼの学校」を実施しています。

地域に講師が赴いて、子どもたちと生きもの調査をし、自分の住む地域にどんな生きものがいるのかみんなで調べます。

高校生等地域研究支援

高等学校の生徒及び高等専修学校の生徒が行うコウノトリ野生復帰に関連したふるさと豊岡に関する研究、調査及び活動等に要する費用を補助しています。ふるさとの知見を深め、将来にわたって豊岡とつながりを持ち、取組みに参加する若者を増やすことが目的です。

生物多様性の保全

小さな自然再生活動支援助成事業

市民団体などが自主的に行うコウノトリの生息地を保全する活動及び地域の生物多様性保全に資する活動を支援しています。

ノアの方舟作戦

豊岡市は、市域の約80%を森林が占めており、希少な植物も生息しています。しかし、シカの食害により森林に生育する野草類の植生状況が著しく悪化しています。このような状況が続くと森林全体の生態系が破壊され、再生不能となることが予測されます。そのため、野草類が生育する山中の一画を森林所有者の理解を得て防護柵で包囲して保護地とし、シカの侵入を防ぐことで、森林資源、自然環境を最低限確保しています。

豊かな森林を守ることは、豊かな河川環境を守る事にもつながります。将来シカの食害圧力が減少した場合、保護地から種子等が外部へ飛散し、周囲の植生回復につながることが狙いです。並行して、シカの駆除も進めています。

コウノトリ育む農法

おいしいお米と多様な生きものを同時に育むコウノトリ育む農法」に取り組んでいます。

コウノトリ育むお米の作付けを増やすには、消費を拡大させることです。当時の子どもたちが市長に直談判し、2007(平成19)10月から2カ月に3回、学校給食での使用が始まりました。2011(平成23)年から週2回、2015(平成27)年から週3回、2017(平成29)年から週5回と提供回数が増加し、域内消費の拡大につながっています。

環境経済

私たちの暮らしを支えるベースは「経済」です。コウノトリ野生復帰の取組みを大きく広げていくためには、人々の“日々の暮らし”の中に取組みを内在させることができるか、経済といかに結びつけられるかが重要なテーマです。

環境を良くすることと、経済を活性化させることは、これまでは相反するものと考えられてきました。そのため、環境を良くする取組みは、使命感や心意気、あるいは公的資金に支えられることが多く、長続きしない傾向があります。

もし、環境を良くする取組みにより、経済が活性化するのであれば、その取組みは継続し、発展して、さらに、環境を良くすることにつながっていくのではないのでしょうか。

豊岡市では、2007(平成19)年に「環境経済戦略」を策定しました。環境を良くする取組みによって、経済が活性化し、さらに環境を良くする取組みが広がる。環境と経済が共鳴する仕組みと、その具体例を積み重ねています。

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