コウノトリブログ

元飼育員のコウノトリブログ⑧ 戸島巣塔17年連続の巣立ち     【施設紹介】豊岡市立ハチゴロウの戸島湿地

元飼育員のコウノトリブログ⑧ 戸島巣塔17年連続の巣立ち 【施設紹介】豊岡市立ハチゴロウの戸島湿地

 

豊岡市の施設では、「豊岡市立三江小学校」と「豊岡市立ハチゴロウの戸島湿地」(以下:ハチゴロウの戸島湿地)にコウノトリの人工巣塔がたっており、どちらも野外コウノトリが繁殖に活用しています。

今シーズン「豊岡市立三江小学校」は、ヒナが巣立ちに至らず、残念な結果となりました。

ハチゴロウの戸島湿地の人工巣塔(以下:戸島人工巣塔)は、526日に親鳥の餌の吐き出しがあり、ヒナのふ化が推定されました。

J0391 オス親の餌の吐き出しを確認。待望のヒナふ化(推定)!! 写真提供:ハチゴロウの戸島湿地

 

その後、ヒナ3羽が順調に成育し、87日に巣立ちを迎えました。

ふ化後26日(左)、41日(中央)、66日(右)   写真提供:ハチゴロウの戸島湿地

 

戸島人工巣塔では、2008年初めて繁殖に成功し、その後、毎年繁殖に成功しています。

今年でなんと、17年連続の繁殖成功となり、これまでにこの巣塔からは、38羽のヒナが巣立ちをしました。

コウノトリが一度繁殖に使った人工巣塔は、ペアや個体が入れ替わっても使い続けられる傾向にあります。

戸島人工巣塔では、2008年から繁殖していたメス親J029420232月に列車事故で死亡しました。

J0294は、2005年に試験放鳥で放たれた5羽のうちの1羽です。

私は、県立コウノトリの郷公園在職中、放鳥個体の選定、馴化訓練などを担当していました。

J0294は、選定した5羽の中で最も飛翔を心配したコウノトリでしたが、放鳥箱の扉が開くと力強く飛び出して大空を舞っている姿を見た時は、心から安堵しました。

2005年9月24日の放鳥では、5羽目の放鳥

 

2008年には、姉妹のJ0296J0381を巡って壮絶なバトルを繰り広げました。

結果は、J0294が負けてJ0296J0381が伊豆人工巣塔でペアとなりました。

その後、J0294は、戸島へ移動してJ0391とペアになり、驚いたとともにうれしかったのを思い出します。

J0294の事故の一報を聞いたときは、かかわりの深かったコウノトリであり、大変悲しかったことを思い出します。

その後、現在のメス親J0102がオス親J0391へ猛アプローチをして、20233月下旬に産卵しペアとなりました。

2023年3月10日 交尾の様子 写真提供:ハチゴロウの戸島湿地

 

今年の繁殖について「ハチゴロウの戸島湿地」の永瀬さんから、次のようなコメントをいただきました。

「昨年は、初めてのペアとは思えないくらい子育て上手で、安心して見守ることができました。今年も安心して子育てを見守れると期待していましたが、そうは問屋が卸しませんでした。第1クラッチ(1)では抱卵中に親鳥が巣を空け、カラスに卵を盗られてしまいました。2クラッチは、3羽のヒナが巣立ちをしましたが、ハラハラ・ドキドキしながら日々見守っていました。思いもよらないことが多く、生きもの相手の仕事をしているのだと、つくづく思い知らされました。」

1:「クラッチ」とは、特定の期間内に連続して産卵することを指します。期間内で卵の喪失等が生じた場合は、再度産卵することが多く、最初を第1クラッチ、2回目を第2クラッチといいます。コウノトリの場合、2月~5月の期間内であれば、次のクラッチへ移行する場合が多いです。

 

ハチゴロウの戸島湿地のスタッフの皆さんが温かい目で見守っていた様子は、「ハチゴロウの戸島湿地」のブログアーカイブをご確認ください。

また、J0294については、20232月のブログ「J0294を偲んで」をご覧ください。

J0294が多くの方に愛されていたことがわかります。

 

【施設紹介】豊岡市立ハチゴロウの戸島湿地

「ハチゴロウの戸島湿地」は、円山川下流域で城崎温泉の対岸に位置します。

「ハチゴロウの戸島湿地」を含む円山川下流域・周辺水田は、国際的に重要で保全が必要なラムサール条約の登録湿地となっています。

「ハチゴロウの戸島湿地」

・ラムサール条約の説明は、環境省のホームページを参照ください

環境省_ラムサール条約と条約湿地_ラムサール条約とは (env.go.jp)

 

施設名称に使われている「ハチゴロウ」は、2002年に豊岡へ舞い降り定住した野生コウノトリの名前です。

85日に飛来したことから「ハチゴロウ」という愛称で呼ばれ、市民の多くの方から愛されたコウノトリです。

ハチゴロウの飛来は、野生復帰を目指し試験放鳥を準備していた私たちとってさまざまな事を教えてくれました。

現在の施設がある場所は、当時、圃場整備の工事途中で水がたまりミズアオイが繁茂する良い湿地でした。

工事前の湿地に「ハチゴロウ」が下り立つ  写真提供:ハチゴロウの戸島湿地

 

この湿地に「ハチゴロウ」が頻繁に飛来し、餌場として活用していました。

このことがきっかけとなり、戸島地区の農家の方と豊岡市で湿地の保全に向けて検討が進められ、市が用地を取得して湿地を保全する施設を建設することとなりました。

「ハチゴロウの戸島湿地」のホームページで詳しく説明されていますので、ご覧ください。

ハチゴロウの戸島湿地 (hachigorou.com)

 

現在、当施設は、市から指定管理者の指定を受けた「日本コウノトリの会」が運営され、「日本コウノトリの会」代表の佐竹さん、事務局長の永瀬さん、相見さんが交代で来場者の対応をされています。

コウノトリへの愛情たっぷりな解説やこぼれ話など、楽しいお話がきけるかもしれません。

左から佐竹さん 永瀬さん 相見さん

 

城崎温泉から近いので、是非お立ち寄りください。

 

 

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