コウノトリ育む農法

「コウノトリ育む農法」による米づくり(コウノトリ育むお米)

豊岡市では、「コウノトリも住める豊かな環境(自然環境と文化環境)は、人間にとっても持続可能で健康的に暮らせる素晴らしい環境であるに違いない」と考え、「コウノトリの餌を増やす」という観点からも、農薬や化学肥料に頼らず、美味しいお米と多様な生きものを同時に育む意識が広がっています。
2004(平成16)年からは、生産された農産物や農産加工品に対する消費者の信頼を高め、消費拡大を促し、農業の安定的な振興を図ることを目的とするブランド化事業も進めています。
コウノトリ野生復帰を支え、コウノトリによって支えられてきたものの代表例が「コウノトリ育む農法」であり、農産物ブランド「コウノトリの舞」ブランドとともに普及を推進しています。
さらに、これまでの「コウノトリとの共生社会」への挑戦を踏まえ、これからの豊岡市の農業のあり方「豊岡市農業ビジョン」(2020年)を定め、さらなる環境創造型農業の面積拡大に取り組んでいます。

コウノトリ育む農法の成り立ち

兵庫県では、環境に対する負荷の軽減と県民への安全安心な農産物の安定供給を図るため、全国に先駆けてさまざまな取組みを進めてきました。
特に「コウノトリの郷公園」の建設予定地となった祥雲寺区では、1990年代からアイガモ農法を取り入れるなど、農薬に頼らない米作りに先進的に取り組んできました。

  • 1993(平成5)年度「兵庫県有機農産物認証制度」創設
  • 2001(平成13)年度「ひょうご安心ブランド農産物認証制度」創設
    ※残留農薬量を国の基準の10分の1以下とするなどとした認証制度

 

また、2001(平成13)年ごろから兵庫県や豊岡市、農林水産省は、乾田化やコンクリート三面張り水路の増加により悪化した水生生物の生息環境を改善するため、環境整備やさまざまな取組みを推進してきました。

<環境整備や取組みの例>

  • 魚類等が水路と水田を移動できる「水田魚道」
  • 「中干し」期間中に水生生物が生き残ることができる「避難場所(素掘り水路等)」
    ※中干し 稲の活力を増すために水田の水を抜くこと
  • 水路における生息・生育場となる「魚巣」
  • 休耕田に年間を通じて水を張ることで水生生物の生息・生育場とする「水田ビオトープ」
  • 冬期等、通常は田んぼが干上がっている時期に水を張る「常時湛水稲作」

 

2002(平成14)年からは、農薬や化学肥料に頼らず、美味しいお米と多様な生きものを同時に育む稲作技術の確立を目指した取組みを進めています。
そうした中、2003(平成15)年ごろから兵庫県や祥雲寺区等の一部の農家が協力し、農薬や化学肥料を使用せず、コウノトリの餌となる生物を育む農法の確立に向けた取組みを始めました。
しかし、当時は農薬や化学肥料を使用し、地域の栽培スケジュールに従って、農作業の効率化、収量増加を図ることが常識的な考え方であり、それに相反する取組みに対して簡単に理解が得られるものではありませんでした。また、農薬を使用せずに雑草を抑制する技術などもまだ確立されておらず、兵庫県は先進的な指導者を県外から招くなど「コウノトリと共生できる農業」の技術開発に取り組みました。強い信念をもった農業普及員らの努力と試行錯誤の末、2005(平成17)年に「コウノトリ育む農法」を体系化しました。

コウノトリ育む農法に求められること

コウノトリ育む農法には化学農薬を使用しない、または慣行栽培に比べ75%低減し、化学肥料の代わりに有機肥料を使用するとともに、田んぼに水を張っている期間を長くするといった要件があります。
水を張る期間を延長することにより、オタマジャクシがカエルまで育ち、ヤゴがトンボになることができ、コウノトリの餌となる生物を増やすとともに、田んぼの生き物のバランスを保つことで害虫抑制等を意図しています。
「コウノトリ育む農法」と慣行農法における田んぼの生物数を調査した結果から、「コウノトリ育む農法」では実際にたくさんの生きものが生息していることがわかっています。また、河川の水質調査においても、農薬関連項目の数値は環境基準を達成した状態を保っています。

コウノトリ育む農法の普及

「コウノトリ育む農法」は慣行農法に比べ、除草や水管理などの手間が増え、収量は低下します。これに対し兵庫県や豊岡市、農林水産省は助成金制度を設けている他、研修会やフォーラムの開催、大規模実践地区の設置、マニュアルの作成等を行い、但馬地域に広げる取組みを行ってきました。
また、2008(平成20)年から3年間、「コウノトリ育む農法アドバイザー養成講座」を開講し、各地区のリーダーに技術講習を行うなどしてきました。
これらの取組みの結果、作付面積は2005(平成17)年のコウノトリ試験放鳥以降、急激に拡大し、現在も増加傾向にあります。

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