コウノトリブログ

コウノトリ普及推進員のブログ㉚ 2025年の繁殖のふり返り -豊岡編 ②-  コウノトリのトリビア 《造巣と営巣の違い》

今年も新たな命の誕生を見守るにあたり、過去のデータや経験をふり返ることが重要です。
前回のブログでは、2025年に豊岡地域で記録された繁殖実績とその特徴をご紹介しました。今回は「2025年の課題」や「2026年の展望」についてお伝えいたします。

【2025年の課題】
① 電柱に造巣
近年、豊岡市内でコウノトリが電柱に巣を作るケースが増えています。一見するとほほえましい自然の営みに思えますが、実は停電の原因となったり、コウノトリ自身が感電やケガのリスクにさらされたりする深刻な問題です。
昨年だけで豊岡市役所には電柱への造巣報告が25件も寄せられ、市の職員が確認後、電力会社が専門機関と連携して巣を撤去しています。
しかし、コウノトリは一度巣を撤去された場所に繰り返し巣作りを試みるため、対応は簡単ではありません。
電力会社は造巣を防ぐためにさまざまな措置を講じていますが、人手や費用がかかります。
この課題を克服するためには、専門機関によるコウノトリにとって安全で適切な営巣環境の知見の提供や方策提言をもとに、地域全体で協力し取り組むことが望まれます。

左:電柱での繁殖行動 数日で巣を完成させてしまいます  右:造巣阻害の対策

-Stork trivia- コウノトリのトリビア
《造巣と営巣の違い》
動物により巣の用途は様々ですが、鳥類の場合、ほとんどが繁殖に使われます。このとき、「造巣(巣作り)」と「営巣」という言葉が使われますが、意味には明確な違いがあります。

  • 造巣(ぞうそう):巣を作る過程のことで、巣を組み上げる一連のこと。
  • 営巣(えいそう):巣の中で産卵し、卵を温め、ヒナを育てること。

専門家でもこの二つの言葉は何気なく混同して使うことがあり、飼育員当時に上司から「繁殖ステージが違う語句なので区別して使いなさい」と言われてから意識するようになりました


② ケガの対応
2025430日、百合地区の人工巣塔(以下「百合地人工巣塔」)で育雛中のオス親J0025が、下嘴の半分ほどを骨折するケガを負いました。
巣塔内には3羽のヒナがいましたが、そのうち1羽が死亡。メス親1羽だけでの育雛は困難と判断され、地域住民と市役所が連携して給餌を実施しました。
また、ケガを負ったオス親については、市民有志の方々がモニタリングを開始されました。
当初は骨折の程度が軽く、活動にも大きな支障はありませんでしたが、日が経つにつれて症状が悪化し採餌が困難になり、518日に死亡が確認されました。
この状況に対し、モニタリングを行っていた市民の方々は大きなショックを受けられ、救護の方針や対応に関して専門機関との連携が十分でなかった点が課題として残りました。
今後は迅速かつ的確な対応のため、専門機関との連携強化が必要と考えられます。
また、オス親の症状悪化に伴い、徐々に帰巣頻度(きそうひんど:巣に帰る回数)が減少し、巣の防衛はメス親1羽だけで行われるようになりました。
その隙をついて、人工巣塔近くの電柱で繰り返し造巣していたカップルが防衛の手薄になった巣を奪い取り、2026年はこのカップルが繁殖すると見込まれます。
コウノトリは同種間で巣を奪い合いペアが入れ替わることがありますが、今回の出来事を目の当たりにして自然界の厳しさを改めて実感させる結果ともなりました。

左:J0025(オス)の下嘴の骨折状況  右:百合地人工巣塔を奪い取ろうとするカップルからメス1羽で防御

③ 繁殖地点、巣立ち個体数とも前年より減少
2025年は、前年と比較して繁殖成功の地点、巣立ち個体数とも減少しました。
その原因はケガやペア関係の悪化、他個体の巣塔の襲撃などそれぞれに異なりますが、共通の要因は他個体が巣塔周辺に居ついてペアに大きなストレスを与えている点です。
豊岡には、人工巣塔が27基あり、これまで繁殖には21基が活用されています。
未使用の人工巣塔を使えば争わずに繁殖できるのにと思いますが、コウノトリにとっては繁殖しているところが子育てに適した環境となります。
ペア・カップルの過密が原因ではありますが、対策を講じる良い手立てが見つからないのが現状です。

【2026年の展望】
① 新たなペアの繁殖
昨年は繁殖に至らなかった4つの人工巣塔で、新たなペアによる繁殖が期待されています。これにより、2025年の繁殖実績を超える成果が見込まれています。
特に気になるのは山本人工巣塔です。ここでは長年J0011(オス)とJ0399(メス)が繁殖してきましたが、昨年は繁殖が見られませんでした。
地元の方によると、J0104(メス)が侵入したことで、落ち着いて繁殖できる環境が損なわれたとのことです。
現在はJ0011とJ0104が仲良くしており、J0399は巣塔周辺に近づけない状況が続いています。
地元の方は、地域に長く定着しているJ0399の繁殖を強く願われています。
私自身も、2007年に山本区で試行錯誤しながら放鳥した思い入れ深い個体で繁殖してほしいと願っていますが、自然の流れに委ねるしかない状況です。
●2026年に繁殖の可能性があるカップルの一覧

② 電柱での造巣
2025年は、電柱で繰り返し造巣行動を行ったカップルが4組確認されました。
そのうち3組は、2024年から電柱や場所を変えつつも継続的に造巣を続けていました。
しかし、2025年5月には1組が人工巣塔へ移り繁殖を始め、それ以降は電柱での造巣をやめています。
さらに、他の2組のカップルも他のペアが使っていた人工巣塔を乗っ取る形で居ついており、2026年には人工巣塔での繁殖へ移行すると予測されます
これらの動きから、2024年から2025年にかけて活発に電柱で造巣していた3組が、2026年には電柱での造巣をやめると予想され、2026年には電柱での造巣頻度が減少することが期待されます。
一方で、新たに電柱で造巣を始めるカップルが現れる可能性も考えられるため、今後も電柱での造巣動向には引き続き注意を払って観察していきたいと思います。

2025年 電柱で盛んに造巣したカップルが人工巣塔へ居ついた様子

1月21日、戸島人工巣塔、戸島地区巣塔から交尾・造巣を始めたとの便りが届き、今シーズンの繁殖期がいよいよ始まります。
豊岡市内には、まだ繁殖に利用されていない人工巣塔も多く残っています。ペアの分散がうまく進み、争いが少なくなることを願っています。
また、産卵してもふ化に至っていない巣塔があり、今年こそ無事ふ化することを祈ってます。
今シーズンも繁殖期の情報を発信していく予定ですので、是非ご覧ください。

 

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