2024年も残すところあと少しとなりました。
私は、これまで飼育員としてコウノトリと接してきましたが、4月から豊岡市コウノトリ共生課で勤務し違うかたちで関わることとなりました。
4月は、野外コウノトリの繁殖期真っ只中。全国各地から、コウノトリの産卵やふ化のニュースが届けられました。
私は、市民の方から寄せられた電柱での造巣状況の確認や市内各巣塔の繁殖状況を確認し、ブログなどで情報発信をしました。
今回のブログでは、全国の繁殖についてふり返りたいと思います。
全国で繁殖行動が確認されたのは、14府県、62カ所となりました。
その内、繁殖に成功(ヒナの巣立ち)したのは、25市町、51カ所。134羽が巣立ちし、いずれも前年を上回る結果となりました。
現在の野外個体数は、463羽(2024年11月30日現在)となり、来年には500羽を超えると思われます。
野外の個体数は、指数関数的に増加していると言われますが、しばらくはこの傾向が続くと考えられます。
今年は、新たに新潟県上越市で繁殖が成功し、国内では最も北の繁殖地となりました。
【トピックス】関東での野外コウノトリの繁殖
関東では、千葉県野田市が初めて繁殖に成功し、3県5市6カ所(栃木県小山市、茨城県行方市、神栖市2カ所、小美玉市、千葉県野田市)で19羽が巣立ちをしました。
関東の野外個体群は、2020年に栃木県小山市で初めて繁殖に成功して今年で5年目となります。
野田市の放鳥個体や関東で生まれた個体を中心に30羽を超える個体数へと成長しています。
関東のコウノトリ野生復帰の取組みは、野田市が2015年から放鳥を開始したことにはじまり、これまでに17羽を放鳥されました。
今年関東で繁殖した6ペアの内、5ペアのオス親が野田市放鳥個体であることを考えると、関東における野外個体群創出に野田市が大きな役割を果たしていることがわかります。
しかし、野田市内では、これまで造巣行動は見られましたが繁殖の成功には至っていませんでしたが、ついに野田市内で野外コウノトリの繁殖に成功しました。
放鳥を開始して10年目となる節目に野田市の皆さんの永年のご尽力が実を結んだ結果となり、本当に良かったと思います。
【課題】
全国で繁殖している野外コウノトリの課題の一つに電柱での営巣が約2割を占めていることがあります。
電柱での営巣は、停電やコウノトリの感電など事故の危険性があり、回避することが望ましいです。
初めての繁殖地では、電柱以外の営巣場所の選択肢が少なく仕方のない側面がありますが、2年目以降は、安全な場所で営巣するように誘導できる方策を確立することが重要と考えます。
野外の繁殖に成功して今年で18年目となりますが、まだまだ解決できていない課題があります。
豊岡市では、引き続きコウノトリの生息環境の整備などに取り組みたいと思います。
●兵庫県立コウノトリの郷公園「全国の繁殖状況一覧(PDF)」