あちらこちらで大合唱
5月中旬、田んぼに水が入りだすと、里山の生きものが活発に動き出します。コウノトリやサギがエサをついばみ、ツバメは田んぼの泥を巣材として利用します。
とりわけ存在感を示すのはカエルたちです。トノサマガエルにアマガエル、ツチガエルにヌマガエル、モリアオガエルにシュレーゲルアオガエル。田んぼや山際の池、ビオトープにやってきて、一斉に産卵を始めます。オスが鳴き、パートナーを選ぶ権利はメスにあるため、オスは気に入られようと大きな鳴き声をあげ、大合唱を始めます。カエルの種類により鳴き声や音程が異なるため、さながら混声合唱団です。
カエルの卵にも違いがあります。大きな卵、小さな卵、泡状の卵など、バリエーションに富んでいます。カエルの産卵は、「耳」だけでなく「目」でも楽しめるのです。
▲トノサマガエルの卵
▲モリアオガエルの産卵
オタマジャクシがカエルになるまでに、1か月半ほどの期間がありますが、その間に田んぼでは一度水が抜かれます。中干しです。田んぼから水が無くなると、多くのオタマジャクシが干上がって死んでしまいます。
そんな状況を回避し、たくさんのオタマジャクシを守る農法が「コウノトリ育む農法」です。中干しを1か月程度延期することにより、オタマジャクシがカエルになり、上陸できるのを待ちます。2005年のコウノトリ放鳥時、市内で41haだった「コウノトリ育む農法」の作付面積は、2019年には428haにまで広がりました。今年も多くのオタマジャクシの命が救われ、立派なカエルになることでしょう。
だんだんと夏が近づいてきます。夜風にあたりながらカエルの歌声を聴き、涼むのもいいですね。